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第18回 日本緩和医療学会学術大会によせて

第18回日本緩和医療学会学術大会
大会長 東口 髙志
(藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座 教授)

 このたび、第18回日本緩和医療学会学術大会の大会長を拝命し、2013年6月21、22日の両日、横浜市のパシフィコ横浜にて開催することとなりました。日本緩和医療学会は1996年に札幌で創立大会(柏木哲夫会長)を開催し年々その規模が大きくなり、2012年4月の時点で、会員一万人を超える世界にも胸を張れる大きな学術集団となりました。緩和医療というわが国のすべての医療の本幹を支えるべく進歩し続ける本学会の全国大会を会員の皆様のご支援のもと主宰させていただくことは誠に光栄に存じます。これも会員の皆様をはじめ緩和医療に携わる多くの方々のご支援の賜物と心より感謝いたしております。現在、細川豊史理事長をはじめ、多くの皆様方のご助言やご支援を賜りながら、大会開催の準備を鋭意進めているところでございます。
 さて、第18回日本緩和医療学会学術大会のメインテーマを「いきいきと生き、幸せに逝く」とさせていただきました。「いきいきと生きる」とは、がんをはじめ様々な苦痛や苦悩を伴った疾患の診断を受けた時から始まる身体的・精神的・社会的そしてスピリチュアルな苦痛を医療の面だけでなく生活の面からも優しく緩和し、“患者様とそのご家族のクオリティ・オブ・ライフを向上する”とともに、高齢化社会によってもたらされる社会福祉の問題点を包含して精神(こころ)にも身体(からだ)にも優しい医療を実現するために、皆様の取り組みや想い、アイデアなどを御披露頂く予定です。また、「幸せに逝く」ために、抗がん治療を代表とする種々の疾病治療のエンドポイントを単なる“survive(生存)”ではなく、“happiness(幸せ)”に置き換えて、患者様やご家族の皆様そしてわれわれ医療従事者にとっても、“幸せな人生だった”と大いなる満足と心豊かなつながりを保ちながら新しい世界へ旅立てるような工夫を闊達に討議したいと考えています。
 2012年は診療報酬と介護報酬の一斉改定が行われ、また同時にがん対策推進基本計画の見直しの年でもあり、われわれが望む新たな緩和医療社会に向かいスタートが切られました。将来、わが国は未曽有の高齢化とがん社会を一度に迎えることになります。そのような中でもわれわれは患者さまが路頭に迷わないようにしっかりと将来を見据え、今後急増する看取りへの対策や在宅医療の推進、さらに病院と地域をひとつの単位とした新しい医療体制としての地域連携を進めていかねばなりません。すなわち、患者様やご家族のために、決して軸をぶらさない医療を構築していかねばならず、今回の学術大会がその起点となればと願っております。 一方、私の独断と我儘ではありますが、是非とも取り組みたい裏テーマがございます。それは「緩和医療に携るスタッフを癒す」ことです。日常診療で精神も身体もくたくたに疲弊しておられる皆様に、私達からの心ばかりのプレゼントと思い、リラックスし、楽しんでいただけるよう趣向をこらしたいと思っています。
 最後になりましたが、これも新たな試みかもしれませんが、医療に携わる者としてアフリカの「飢餓に苦しむ子供たち」の命を守るために寄付のお願いをいたしております。わずかな金額で結構ですので是非ともご協力をお願い致します。皆様から頂戴する厚き温情は、国際連合が管轄しますWFP(国際食糧支援機構)へ寄附させていただきます。

 本学術大会が参加される皆様にとりまして、多くの知識や技術を身に着けていただける意義ある学術大会となりますように、また、少しでも“癒し”を感じていただける機会となりますように鋭意努力する所存でございます。
多くの参加者の皆様を横浜にお迎えできることを楽しみにしております。